昨日から、私のいる現場では某レース場の場外発売が行われている。 来場されたお客様に、某レース場からの衛星中継映像を流しているのだが、この中継映像が、見ていてどうにも不愉快なのだ。
数台あるレースカメラ。そのうちの1台は、走っている選手を正面から大胆にアップで捉えている。 たしかに、その構図は格好良く見えるかもしれない。 しかし、これではレースの展開が全く分からないのだ。 これはあくまでレース中継であって、好プレー集のような企画番組ではない。
レース中継の視聴者は、選手個人の大胆なアップなど求めていない。 番組を作る以上、「視聴者が何を求めているか」を第一に考えなければならない。 公営競技の中継であれば、視聴者が最も気になるのはレースの展開と着順のはずだ。 だが、この映像からは、その肝心なレース展開が一向に見えてこない。 見えるのは、ただ選手が走っている姿。それだけである。
制作側(送り手)が自惚れてしまうと、視聴者(受け手)のニーズは読み取れなくなる。 例えるなら、寿司職人が斬新さを追い求めるあまり、寿司にケチャップをかけて「俺はなんてセンスが良いんだ!」と自己満足に浸っているようなものだ。 しかも、それをお客さんに「美味いから食え!」と無理やり食べさせるような押し付けがましさがあり、実に不快である。
真にセンスの良い寿司職人(送り手)とは、ネタを最大限に活かし(受け手のニーズに応え)つつ、なおかつ印象に残るアクセントを加えられる、そういう人ではないだろうか。
センスとは、文字通り「読み取る力」。 この場合は、受け手のニーズを読み取る力に他ならない。
自分を表現者(送り手)だと任じる方々へ。 あなたは、自己満足を人に押し付けてはいないだろうか? 受け手のニーズに応えられているだろうか? 相手は気持ちよく受け取ってくれているだろうか?
自戒の念も込めて、今一度考えてみてほしい。
そうそう。ここの制作会社はテロップやスーパーの色使いも滅茶苦茶で見づらい。 視聴者にとっての見やすさを考えるのも、センスのうちなのだ。 この制作会社は、すべてを自己満足で番組作りしているのだろう。
Special Thanks: バイトのY君 (「寿司にケチャップ」とは、彼がこの映像を見て口にした一言である